北海道地すべり学会

リンクお問合せ サイトマップ
お知らせ

平成14年度第1回(通算37回)研究小委員会の報告


 

日時:平成14年10月12日(土曜日),午後3時から6時
会場:KKR札幌 北斗の間

話題提供
大阪工業大学名誉教授 藤田 崇  氏
「地すべりと地質学−近畿の地すべりの事例から−」

様子

ご承知のように先生は8月末に藤田 崇編著「地すべりと地質学」を古今書院から出版されました。同書では第1部地すべり研究へのアプロ−チとして地すべり現象をどのように考え,どのように研究すると,防災に役立てることができるか,さらに,防災科学としての地質学の役割についてまとめられており,第2部地すべり研究の事例として近畿地方を主に四国および中部地方の地すべりが解析されています。
今回の話題提供では時間の関係でその中から項目を厳選していただき,1)斜面変動の分類,2)斜面変動に基づく地質区分,3)斜面変動の運動型,4)斜面変動の岩相・地質構造・造構運動規制,5)地形の定量化,6)斜面の安定性評価に関わる基本デ−タ,7)斜面災害の危険降雨量領域など多岐にわたる解説と四国や紀伊半島における地すべり災害事例についての紹介いただきました。地すべり災害事例紹介では当委員会の対象フィ−ルドである滝川−吉野地域に密接な1889(明治22)年8月の十津川災害についても触れられ,富沢 正 氏が「荒野の開拓者」と題して寄稿された災害(支部ニュ−ス,地すべり北海道11,pp.15−18)の背景が再確認できました。
藤田先生には当委員会の活動テ−マなどをお伝えし,関連ある内容でとのお願いをしていなかったのですが,テ−マへのアプロ−チの仕方,対象フィ−ルドの背景など非常に有益なお話をしていただきました。遠路お出でいただきお疲れのところ,委員会終了後も遅くまで議論に参加していただき,心から感謝申し上げます。

報告・討議

1.判読結果の比較検討と判読・表示基準について

 

メンバ−の宿題となっていました・幌加尾白利加川下流域,・チャシパロナイ川・高石沢川流域および・ワッカウエンベツ川上流域の判読結果を資料に基づき比較検討しました。地域によって地すべり地形の規模や運動型に特徴があり,それらを反映して判読の難易度が異なり,必ずしも一致した判読結果ではありませんでしたが,主たるものは概ね把握されていたと思います。今後,一致していない点をより詳細に比較し,どのような特徴をとらえて認定したのか,逆になぜ把握できなかったのかといった検討をしつつ判読認定基準を作成することが必要と思います。表示基準については明確に把握できるものとできないものとを区別するため,若山ほか(1999)が提案した確実度や地形判読図・地形区分図を導入することを考えています。

2.今後の作業について

 

今後の作業として以下の4点に取り組みます。
(1)変動履歴の判読と表示の比較検討
(2)変動タイプ区分・危険度区分などを含めた判読・表示基準の作成
(3)対象地域全域の判読・マッピング
(4)地すべり災害・調査事例の収集
    ・関係機関に眠っている既災害・調査報告を発掘する。
    ・当該斜面の写真判読し,どのような斜面での変動かを把握する。
    ・情報を収集しつつ,発生誘因を検証する。

(1)変動履歴の判読と表示の比較検討については,・徳富川上流の左岸側,大規模地すべり斜面およびその周辺斜面,・徳富岳稜線の南端部,大規模地すべり斜面の2箇所について変動履歴と変動域の判読解析をメンバ−全員で行います。欠席者の写真および資料は石丸さんのところにありますので,各自入手して,11月末までに判読結果を委員長・伊藤まで提出下さい。
また,(2)〜(4)の作業を効果的に行うために以下のようなサブワ−キンググル−プの立ち上げます。委員会の席で決定した所属は以下のようです(*印,責任者)。欠席者は希望をグル−プの責任者および委員長・伊藤まで連絡下さい。
・判読表示基準化グル−プ:*中村(研),田近,若山,山根,戸田
・判読解析グル−プ:*伊藤,石丸,安田,太田,渡辺,菅野
・事例収集解析グル−プ:*宮坂,雨宮,磯貝
  各グル−プの作業は責任者を中心に進めていただきますが,作業や情報を共有するため,会合日時,検討事項などはメンバ−全員に流して下さい。
  第2回委員会は12月開催を予定しています。